もの忘れ外来
認知症治療について
認知症は治らないと思っている方が多いと思いますが「慢性硬膜下血腫」「正常圧水頭症」「脳腫瘍」などの外科的治療により改善しうる病態もあります。
また甲状腺ホルモンの欠乏やビタミン欠乏などで認知症の症状が出ている場合は、内科的治療によってよくなることがあります。
認知症の症状について
ご本人様またはご家族様へ
このような症状がみられたら、ぜひ受診を促してみてください。
問診を行い記憶や認知機能の程度を調べたり、脳の状態を見て原因を追究したり、その方に合った治療を行います。
このような症状は
ありませんか?
- 同じことを何度も言ったり聞いたりしてしまう
- 物の名前が出てこなくなった(思い出せない)
- 新しいことが覚えられない
- 置き忘れやしまい忘れが目立つ、いつも探している
- 以前関心があったこと(趣味や好きなTV番組など)に
対して興味を示さなくなった - 料理のミスが増えた、味付けの変化、片付けが
できなくなった
- 身だしなみを構わなくなった。
(例:髪の毛ボサボサ、いつも同じ服、季節感のない服装) - 約束の時間・場所を間違えることが増えた
- 計算や身の回りの管理ができなくなってきた
(例:財布は小銭だらけ、冷蔵庫の中には同じものが多量にストックされている。処方された薬が家に多量に余っている。薬の管理ができなくなるのは認知機能低下の始まりとしてよく経験します)
一言で認知症といってもその原因はさまざまです。認知症を引き起こす主な病気はこちら
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アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、脳が萎縮していくことによって認知機能が低下する病気です。
認知症の約6割を占め、もっとも多い認知症とされています。進行の流れ
短期記憶の中枢である海馬という部位が萎縮すると、体験したこと自体を忘れてしまう記憶障害が起こります。
記憶障害が起こると、新しいことを覚えられなくなります。(認知症初期は「物忘れ」というより「覚えるのが下手くそになる」といった印象です)また、見当識障害と言われる年月日や時間、季節などの感覚が薄れていきます。さらに進むと、今自分がどこにいるのか、人物が分からなくなります。(赤ちゃんは成長と共に「人」→「場所」→「時間」の順で周りを認識しています。一方、認知症の方は、その『逆』の順で認識ができなくなっていきます。
つまり「時間」→「場所」→「人」といった順で分からなくなっていきます)症状
進行する認知障害(記憶障害、見当識障害、学習障害、注意障害、視空間認知障害や問題解決能力の障害など)であり、ある程度進行すると生活に支障が出てきます。
さらに進行すると、歩くことや、食べること、意思疎通なども出来なくなり、最終的には寝たきりとなります。 -
脳血管性認知症
脳血管性認知症は、脳梗塞、脳出血などにより脳が障害された結果、認知機能が低下する病態です。
脳に何らかの障害が残った場合、後遺症として進行し、障害された部位によって症状は異なるので、麻痺や感覚障害など神経症状を含め、障害された機能と障害されていない機能が混在します。また脳血管障害(脳梗塞や脳出血)を起こすたびに階段状に症状の悪化を認めることも特徴です。
実臨床では前述したアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症の合併例を診ることが多いです。 -
レビー小体型認知症
レビー小体型認知症は、「レビー小体」と呼ばれる変性したタンパク質が、脳の大脳皮質に溜まることで発症する認知症です。
日本ではアルツハイマー型認知症や脳血管性認知症と並び三大認知症と呼ばれています。進行性の認知機能障害に加えて、幻視症状やパーキンソン症状を示すことが特徴的な認知症です。
レビー小体型認知症は、次のような特有の症状が表れます。幻視
レビー小体型認知症の幻視は「錯視」といって天井の模様が虫に、カーテンが幽霊に見えたり、スリッパが子犬やネズミとして見えてしまったりします。小動物を追い払おうと大声を出したり、不審者として警察に通報したりしてしまうこともあります。妄想との違いは、第三者がその場にいても、まるでそれらが今目の前にいるように話されます。
ご家庭でも可能な対応としては、柄物の家具や小物などをできるだけ置かないなどをアドバイスしております。パーキンソン症状
- 動きがゆっくりになる
- 手足の筋肉が硬くなる(固縮)・無表情
- 姿勢のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)→転倒しやすくなる
- 歩幅が小さくなり、歩き始めの足が出しづらくなる(小刻み歩行)
自律神経症状
内臓の動きや体温などの調整を行う自律神経が乱れ、さまざまな不調が生じます。
- 立ちくらみ
- 便秘などの体の不調
- 膀胱を調整する自律神経の場合、尿もれや尿失禁など
レム睡眠行動障害
寝ている最中に突然大声を出したり暴れたりする症状のことです。
むずむず足症候群のように寝ているときの足の違和感で不眠となっている患者様もいらっしゃいます。
寝ているときに悪夢にうなされて大声を出したり、体を大きく動かしたりすることがあります。そばで寝ているご家族を殴ったり蹴ったりしてしまうケースもあり、ご本人は覚えていない為、ご家族と一緒に来院されることもあります。認知機能や意識レベルの日内変動
認知機能の良し悪しが日や時間帯によって大きく変化することもあります。気分がふさぎ込みがちになり、外出をしなくなった、笑顔がなくなった、趣味などに関心を持たなくなったなど「うつ症状」で外来受診される患者様も多くいらっしゃいます。
レビー小体型認知症は、もの忘れなどの認知機能の低下よりも前に、これらの症状が表れやすいと言われています。注意点
レビー小体型認知症は前述した通り、あらゆる症状で出現し、それらに対してさまざまな薬が処方されます。
ここで注意が必要なのは、レビー小体型認知症の場合、これらの治療薬の効果が過剰に出現するといったことです。そのため、量や種類を変更したときなどに特に注意が必要です。(例:通常量の鎮静薬を飲んだら、過鎮静となり日中も傾眠傾向となってしまった)レビー小体型認知症の診療に慣れていない医療機関だと起こりやすい失敗事例だと思います。レビー小体型認知症が疑わしいい場合や診断された場合は適切な医療機関でのフォローアップをお勧めします。
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治療可能な認知症
採血で評価可能
- 甲状腺機能低下症
- 神経梅毒
- 各種ビタミン欠乏
- 高アンモニア血症 など
画像検査で評価可能
- 慢性硬膜下血腫
- 一部の脳腫瘍
- 水頭症 など
当院のもの忘れ外来では、長谷川式認知症スケールに加え、上記の採血や画像検査などを提案させていただいております。(画像検査は近くの病院へ紹介状を作成し、画像検査のみ受けてきていただいております)
これらの「治療可能な認知症」は、その原因を取り除くことで、認知機能を改善しうるとされており、それらの病態を除外することも物忘れ外来の重要な役割と考えます。
「住み慣れた場所で、住み慣れた人と」をトータルにサポート!
認知症はご本人も辛いですが、周りの方の負担も増え、同じように悩まれるケースがあります。
特効薬を求めてもの忘れ外来にいらっしゃる方も多いですが、現時点では著効する薬※がないのも、認知症診療の辛いところです。
病気や症状を効果的に改善し、治療することが期待される薬のことを言います。
当院では周辺症状に対する薬などの医学的アドバイスのほか、介護や福祉に長けたスタッフによる総合的なサポート・アドバイスも行います。当院が30年で培ってきた地域での介護ネットワークによる、デイサービスやショートステイなどの介護領域でのサポートもスムーズに提案できることが当院の強みです。
今後もご本人およびご家族が今まで通りの生活を維持できるようにお手伝いさせていただいております。